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DR. アベの健康外来_22 胃のもたれが辛く、消化器内科を受診したところ、「機能性ディスペプシア」と言われました。恐ろしい病気でしょうか。

2014/10/15【日本商工倶楽部・連載記事】

(2013年10月1日 650号掲載)

 

食後のもたれ感、胸やけやげっぷ、悪心、みぞおちの痛みなどの自覚症状が強くあっても、必ずしも内視鏡で異常所見があるとは限りません。これを「機能性胃腸症、機能性ディスペプシア」と呼んでいます。カタカナ病名となると恐ろしい病気のようですが、以前は慢性胃炎として治療されてきた病気です。

 

2006年に機能性ディスペプシアは逆流性食道炎を除いて2つのタイプに分類されています。すなわち食後の困窮症候群と心窩部痛症候群です。分かりやすく言えば、①心窩部(みぞおち)の症状が中心で、②食事に関連する症状であり、③胃の弛緩障害(食後早期の満腹感)であるという、3条件を満たす場合に診断されます。

 

胃の内視鏡で異常がないのに、どうしてこんな事が起こるのでしょう。その原因として心理的ストレスや身体的要因が考えられています。機能性ディスペプシアでは、消化管症状以外にも全身のだるさ、冷え、立ちくらみ、背部痛、肩こりなど、いろいろな症状が混在していることが多いのです。

 

さて、どのような治療法があるのでしょうか。この病気の基本的治療は、まずストレスや疲れを貯めないこと、深夜の食事や脂肪の多い食事の回避、断酒、禁煙など日常生活習慣の改善を図ります。改善が見られなければ、消化管の運動機能改善薬を使用します。これには多数の種類がありますので、参考までに薬品名を挙げてみましょう。①アボビス(アセチルコリン作動薬)、②プリンペラン、ナウゼリン、ドグマチールなど(ドパミン受容体拮抗薬)、③ガナトン(ドパミンD2受容体拮抗薬)、④ガスモチン(セロトニン5-HT4受容体作動薬)、⑤セレキノン(オピアト作動薬)、⑥六君子湯、半夏瀉心湯、安中散など(漢方薬)があります。症状に合わせて使います。

 

ここまでで大部分の人は2週間で症状が改善しますが、改善しない場合には、酸分泌抑制薬を併用します。不安が強い症例では、抗不安薬も併用します。

 

これでも改善しない時には、尿素呼気テストや血液抗体法などによりピロリ菌の感染を確認します。ピロリ菌が陽性の場合には、ピロリ菌の除菌薬を服用します。ピロリ菌が陰性の場合には、今まで行ってきた治療を続けます。

 

一般の治療現場ではすぐに内視鏡検査を行うわけではなく、まず症状によりお薬を処方します。しかし薬物治療でも症状が改善しない場合には、私は躊躇せずに胃潰瘍や胃がんなどの他の病気の可能性なども考えて、内視鏡検査などを積極的に勧めるようにしています。

 

ここで、病名の由来を説明しましょう。欧米では内視鏡検査などで潰瘍を認めない患者さんで、胃もたれや胃の痛みなどを訴える場合にnon-ulcer dyspepsia(NUD)という診断名が用いられてきました。これを直訳すると「潰瘍を伴わない消化不良」、すなわち症状を有する「臨床的慢性胃炎」ということになります。最近になって、このNUDが機能性ディスペプシアと訳されるようになり、治療が適切に行われるようになってきたのです。

 

九段クリニック 阿部博幸


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