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DR. アベの健康外来_16 うっかりすると喘息発作 ― 貼り薬と目薬の落とし穴

2012/10/31【日本商工倶楽部・連載記事】

 (2012年10月1日 644号掲載)

 

どんな薬剤にも副作用があります。薬剤の能書には、そのことが明記されています。医師は薬剤の副作用に十分に注意して処方していますが、患者さんからの情報がない場合には、うっかりして副作用を起こす可能性がある薬を処方してしまうことがあります。とくに外用薬は、気軽に使用されるため、患者さんの要望に応じて処方してしまうことがあります。そんな例を紹介しようと思います。

 

いつもは高血圧で治療に来られている60才の男性は、庭仕事をして腰痛となり、貼り薬でなんとか痛みを取りたいとの希望でした。鎮痛作用のある湿布薬を腰のところに貼るようにと処方を出しました。

 

ところが翌日、患者さんが来院し、どうも湿布薬を使ったら息苦しい感じになると訴えてきました。私はハッとしたと同時に、過去の病歴をよく聞いていなかったことを深く反省しました。この患者さんは「アスピリン喘息」を持っていたのです。

 

成人の喘息はアレルゲン、冷気、運動など、いろいろな刺激に反応して発作をおこしますが、成人喘息の約10%はアスピリンのような鎮痛薬も刺激となって、ひどい発作が誘発されることがあります。鎮痛薬の刺激により肥満細胞などからロイコトリエンという気管支収縮物質が大量に生成されるためです。この症状をアスピリン喘息と呼んでいます。

 

鎮痛薬の成分として一般に使用される薬は、非ステロイド抗炎症薬と呼ばれ、アスピリン、インダシン、ブルフェン、ボルタレン、ロキソニンなど多くの種類があります。アスピリン喘息のある患者さんは、これらを使用すると1時間以内に喘息発作が起きます。意識障害を伴う大発作になったり、時には死亡することもあります。これらの薬は内服薬や注射薬だけでなく、自分で使用する座薬や湿布薬も、先に挙げた患者さんのように、発作を誘発してしまうのです。

 

現在処方される貼り薬やぬり薬については、イドメシン、インテバン、カトレップ、インサイド、セラスター、フェルデン、バキソ、ナパゲルン、セルタッチ、ゼスタック、ロキソニン、ボルタレン、ナボール、メナシン、エパテック、セクター、モーラス、ミルタックス、アドフィード、ステイバン、ゼポラス、フルルバン、ヤクバンなど多種類に及びます。これらの外用薬は一般の薬局で入手できるものもあるので、つい気軽に購入しがちですが、アスピリン喘息のある方は、薬剤師に必ずご相談ください。塩基性鎮痛薬(ソランタール、ペントイル、キョーリンAP2)は、喘息発作を誘発せず、比較的安全と考えられています。

 

もう一つ別のメカニズムで喘息発作が起きます。気管支にも神経支配があり、夜間に活発になる副交感神経は気管支を細くし、日中に活発となる交感神経は気管支を広げる方向に働いています。

 

眼圧が上がり、視野が狭くなる緑内障という病気があります。眼圧を下げるために使用される点眼薬の多くは、交感神経遮断薬であるため、気管支喘息をもっている人には発作を誘発します。たかが目薬とあなどることはできません。74才の女性で緑内障の患者さんが、必要以上に目薬をさし、喘息様の咳が続いていますが、休薬すると軽快していました。

 

点眼薬につきましては、非選択的β遮断薬のチモプトール、リズモン、ミケラン、ハイパジール、ニプラノールなどは気管支喘息には禁忌ですが、β1受容体選択性遮断薬ベトプティックは、喘息患者に禁忌ではありません。

 

過去の病歴を医師に告げる大切さと、注射や内服薬以外でも重大な副作用が起こることを忘れないようにしましょう。

 

九段クリニック 阿部 博幸



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