HOME > メディア・学会活動 > 日本商工倶楽部・連載記事 > DR. アベの健康外来_15 歯科に「周術期口腔機能管理」が保険適応として新設されたのをご存知ですか?

メディア・学会活動

DR. アベの健康外来_15 歯科に「周術期口腔機能管理」が保険適応として新設されたのをご存知ですか?

2012/08/31【日本商工倶楽部・連載記事】

(2012年8月1日 643号掲載)

 

歯周病とがん、動脈硬化、糖尿病などの全身疾患との関連について、近年多くの研究結果が報告されています。そこには歯周病のある患者さんや、口腔機能の低下している患者さんが麻酔や大きな手術を受けた場合は、大変な合併症を起こしやすいことなど、深刻な因果関係が示されています。


これを受けて厚生労働省は平成24年4月から、歯科において「周術期口腔機能管理」を新たに設けました。周術期とは、手術を挟んだ前後の時期を指す医学的な言葉です。この制度により保険で歯科医による手術前後の口腔機能管理計画や実際の管理が受けられ、病院に入院中は歯科衛生士による口腔衛生処置を受けられるようになったのです。


しかしながら、医科医師にも患者さんにもまだ十分に知られていません。

これまでは、医科の先生が自分の専門の治療だけを行い、口腔衛生についてはほとんど気を配ることはありませんでした。また、歯周病と全身疾患との関連が一般に知れるようになったのも最近のこともあり、患者さん自身も術前に口腔ケアをしようとは考えませんでした。今後は本制度により、大きな手術、例えば心臓血管外科、消化器のがん、頭頸部のがんなど全身麻酔で手術を受ける患者さんは、術前に口腔清掃や歯科治療を実施し、更に術後には咀嚼や嚥下などの口腔機能の維持・改善により、経口摂取・栄養の保全確保に結び付けたいところです。

これにより、誤嚥性の肺炎などの重篤な合併症を予防することは、回復を促すばかりではなく、入院日数の短縮につながります。


手術だけではなく、口腔領域に障害を生じる可能性の高い放射線治療やがんに対する化学療法(抗がん剤)を受ける場合でも、口腔の不潔化や重篤な口内炎、摂食困難などの辛い合併症が見られます。


ここで述べた「周術期口腔機能管理」は、医科歯科連携のチーム医療によって、初めて有効に行われます。すなわち手術や放射線治療、化学療法を実施する病院やクリニックの医師が、患者さんの「周術期口腔機能管理」を歯科医に依頼することにより、実行されるのです。


先日、60才になる女性が卵巣がんを発見され、抗がん剤を奨められましたが、歯槽膿漏があるのでどうしようかと相談にきました。この患者さんは歯科のない病院で抗がん剤治療を計画されていましたので、病院の主治医に歯科診療所に紹介状を書いていただき、治療前の歯科治療を奨めました。


また、口から食事が摂れることの重要性をお話しした上で、口腔ケアをしっかりなさるようにお話ししました。特にセルフケアとして基本的に歯磨き、フロスや歯間ブラシなどの補助清掃用具を使って、一日三回は行っていただきました。薬液うがいによる歯周ポケットの洗浄も心掛けていただきました。


抗がん剤で体がだるく吐き気があるときでも、毎日欠かさず口腔ケアを行っていただいたことと、周術期の口腔管理計画により歯科医の先生の定期的なチェックが功を奏し、一度も口内炎にならずに食事を摂ることができたと報告していただきました。


普段から口腔ケアを心掛けることは、全身疾患のリスクを減らすことにつながり、万が一、大きな病気で入院手術などを行う場合は、合併症防止と予後良好のために、担当医師に周術期口腔機能管理をしていただくよう、相談してみましょう。

 

九段クリニック 阿部 博幸



ページトップ

"
Copyright KUDAN