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DR. アベの健康外来_13 心房細動があるため、ワーファリンを服用していますが、新薬のプラザキサに換えたらと言われました。大丈夫でしょうか?

2012/05/17【日本商工倶楽部・連載記事】

(2012年4月1日 641号掲載)
 
ご存知のように、心房細動は不整脈の一つで、心房 が収縮するのではなく、ただ振えているような状態になっています。そのため、左心房に血の塊(血栓)ができやすくなり、これが血流にのって脳の血管を閉塞 すると脳梗塞を起こします。巨人軍の長嶋茂雄元監督が不幸にもこの病に倒れたのはまだ記憶に新しいと思います。
心房細動は、中高年者に多く、薬剤ではなかなか正 常のリズムにもどすことは困難です。そこで、心房細動の治療は①心拍数をコントロールすること、②左心房に血栓ができないようにすることです。①について は、ジキタリス製剤などが一般的に用いられ、②については抗凝固薬のワーファリンが一般に使用されています。
ワーファリンは、1920年頃、カナダやアメリカ北部の牧場で腐ったスウィートクローバーを食べた牛が急に出血が止まらなくなり死んでいったことを契機にジクマロールが発見され、1943年にはワーファリンとして合成されました。
この薬剤を使用する上で注意しなければならない大きなポイントが二つあります。一つは「ビタミンK」でもう一つは「定期的血液検査」です。
まず、ワーファリンは血液に直接作用するわけでは ありません。肝臓で作られる血液を凝固させる物質の合成には、ビタミンKが関わっていますが、ワーファリンはそのビタミンKを阻害することで、抗凝固作用 を発現します。従って、ワーファリンの効果がビタミンKによって弱められないように、納豆、クロレラ、青汁など、ビタミンKを多く含む食品を食べることが できません。他の緑色野菜にもビタミンKが含まれていますが、一度にたくさん食べるのでなければ、ワーファリンの効果にそれほど影響はないでしょう。ま た、他の薬との併用については、ワーファリンは相互作用に影響を受けやすい薬剤が数多くあるので注意が必要です。特に、骨粗鬆症治療薬でビタミンKを含ん でいる「グラケー」はワーファリンの作用を減弱するため併用禁忌となっています。
そしてワーファリンを服用しているときには、少な くとも4週間に1回以上の血液検査、すなわち、プロトロンビン時間INR測定をしなければなりません。日本循環器学会のガイドラインではワーファリン投与 時のINRの目標値は70才未満では2.0~3.0、70才以上では1.6~2.6を目標としています。
なにかと不便なことが多いワーファリンに代わる、 使いやすい薬剤が待ち望まれてきました。そこに、新しい抗凝固薬として2011年4月より我が国でもプラザキサが発売となりました。月々の血液チェックが 不要で、食べ物の制限がない夢のような薬として期待されています。しかし、発売して間もなく出血性合併症による死亡例も出ていますので、適用患者の慎重な 選択が必要です。
ワーファリンからプラザキサに換えて良いかと問われれば、慎重にならざるを得ません。日本循環器学会では、心房細動におけるプラザキサの推奨要件として、次の項目を挙げています。①心不全、②高血圧、③75才以上、④糖尿病、⑤脳梗塞や脳虚血発作の既往が一つでもあれば推奨するとしています。
しかし、プラザキサのメーカーサイドの講演会では、次のものを禁忌としています。①クレアチニンクレアランス毎分30ml未満、②機械弁の置換例。また、慎重投与として、①消化管出血の危険性の高いもの、②中等度の腎障害、③アミオダロンやベラパミルの服用者、④70才以上の高齢者となっています。ここで見解の相違があり、私としては、もしあなたが75歳以上であれば従来通りワーファリンを選択する方が、安全性が高いと考えお勧め致します。
 
 
九段クリニック 阿部博幸


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