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DR. アベの健康外来_8 健診でコレステロールが高いと言われたが、薬を飲むべきか?

2012/02/12【日本商工倶楽部・連載記事】

(2011年6月1日 636号掲載)
 
健康診断を受けたA氏62歳がそのデータを持って外来に相談に来ました。そのデータによると、総コレステロール242mg/dl、LDLコレステロール152mg/dl、HDLコレステロール42mg/dlと記されていました。そして、診断欄には「高脂血症、要治療」とあります。彼は薬を飲むべきかどうかを迷っていました。
確かに数字だけを見るとやや高い値です。ここで問題となるのは、①家族歴すなわち家系にコレステロールの高い人がいるか、②脳や循環器系の症状があるか、③ライフスタイルすなわち喫煙しているか、どんな食事を摂っているか、そして普段から運動を心掛けているか、④現在、高血圧、糖尿病、狭心症などの治療をしていないか、以上の4つの事項が判断する上で重要となります。
A氏については、①②④は全く問題はありませんでしたが、食事は日本食を好み、喫煙はこの40年間続いていました。そして運動らしい運動は行っていませんでした。
コレステロールが高い人はカロリーの少ない食事に偏りがちですが、身体に必要とされるコレステロールの70%前後は体内で合成されているので、食事の影響は3割程度しかないのです。習慣的にコレステロールを多く含む食品を食べている人は、少ない人に比べて総コレステロール値やLDLコレステロール値が差がないか、むしろ低めです。
その理由はコレステロール合成酵素が身体のコレステロールを調整しているのです。日本人の食事摂取基準(2005年版)では、コレステロール摂取上限は男性で750mg/日、女性で600mg/日です。卵には約250mgのコレステロールが含まれていますが、他にコレステロールを摂らなければ、一日1~2個を食べるのであればまったく問題ありません。
A氏の相談に対して私は薬をすすめずに次のように提案しました。まず第一に禁煙をして、食事は和食にこだわることなくバランスを良く摂ること。ただし、野菜と魚は多い方が良いこと。そして、メタボリックシンドローム気味のA氏は運動が不可欠なので、一日一万歩を歩くことにより、代謝改善と血行動態の改善を図り過剰なエネルギーを消費するようにすすめたのでした。3ヶ月後の検査で、いずれも正常値となっていました。
日本動脈硬化学会は脂質異常症をLDLコレステロール140mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満、中性脂肪150mg/dl以上を基準として決めています。しかし、年齢、性別、先天性遺伝因子を持つ人の割合などが考慮されておらず、信頼性の高いものではありません。「この基準値を一般集団に適用することは、むしろ健康長寿を損なう危険なものとなっている」と日本脂質栄養学会は今日のコレステロール低下医療に警鐘を鳴らしています。
私が参加していたJ-LIT地域対象コレステロール研究の追跡調査結果では、コレステロール値と心疾患の間には相関は見られず、食事指導が最大のハザード比を示していました。このことは、コレステロールが高い方が健康長寿をもたらすという一つの証明になっています。また、茨城県民(40~79歳男女約九万1200名)の10年間追跡調査でも、LDLコレステロール値の低い群で有意に総死亡率、総循環器疾患死亡率、脳卒中死亡率が高いという結果が出ています。
コレステロール値が多少高めでも薬で急激に値を下げることなく、食事を含めたライフスタイルの改善で徐々に身体のバランスを取り戻すことが肝要と言えます。
余談ですが、日本の研究でマーガリンなどのリノール酸の多い食事はコレステロールとは無関係に死亡率を高めることが報告されています。一方、魚油中のEPA(エイコサペンタエン酸)が動脈硬化や炎症性疾患の予防に有効であることはほぼ確立しているので、質の良い食事を心掛けましょう。
 
九段クリニック 阿部 博幸



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