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DR. アベの健康外来_6 動脈瘤破裂による突然死は防げるのか

2012/02/12【日本商工倶楽部・連載記事】

(2011年2月1日 634号掲載)
 
「突然死」と言えば、急性心筋梗塞や脳卒中による24時間以内の予期せぬ死をさしているものを想像します。。しかし、胸部大動脈や腹部大動脈による破裂が原因で起こることが少なくありません。この場合は多くの例で「瞬間死」の形をとるのです。
今回は、私が外来で接した患者さんの中から2例ほどピックアップして紹介しましょう。
第一例目は、71才女性でした。主訴はパニック障害で、電車に乗るのが怖くなったり、突然電車がどちらに向かって走っているのか判らなくなりパニック状態に落ち込むというものでした。脳のMRI検査では、軽い慢性的な虚血性の変化は認めるものの、記憶装置である海馬傍回の萎縮はほとんど認められず、アルツハイマーのような病態は考えられませんでした。
しかし、今後の生活や病状の進行などを心配して、某大学の心療内科の教授のご指導をいただくことになりました。今後どのような生活や注意が必要かを教授に伺ったところ、「今のままで良いのですよ」との返事でした。この言葉を聞いて心から安堵したようです。
その後、数日して御主人から電話がかかってきて「妻があっというまに亡くなった。私が朝ご飯を作っている間に。」と。聞くと病名は解離性大動脈瘤で、あっという間のことだったと。
実は、この患者さんは尿路結石があったので、これより4ヶ月前に胸部・腹部のX線CTを撮影していました。胸部で血管が3.5 cm、腹部で3 cmと拡張はしていましたが、解離の兆候は見られませんでした。ただ、ストレスのため長い間低体重となり、栄養障害のために血管壁がもろく変性しやすい状態になっていたのかと後で推察しています。大動脈解離の予知が困難であったケースです。
第2のケースは、動脈瘤の破裂前にその危険を診断できた例です。年齢83才の男性です。普段は喘息や胃炎の薬を処方しておりましたが、いつも大変元気な様子でした。ところが12月の27日頃より背中にビリビリと痛みが走ることがあり、この数日やっと治まったと来院したのが1月17日になっていました。尿路結石も考えられますが、痛みの性質から動脈瘤も考えた私は、早速X線CTと腹部超音波検査を行いました。
腹部大動脈は、腎動脈直下4 cmから直径5.4 cmの嚢(のう)状の大動脈瘤が確認できました。超音波検査でも同等の大きさを確認するとともに、すでに動脈瘤に壁在血栓の形成がみられました。すでに急性期がすぎて亜急性期にあると判断しましたが、不慮の事態のことを考えて入院していただくことになりました。
高齢でもあり、入院先の主治医とも相談し、できるだけ手術を避ける方向でカテーテルを用いた血管内治療として大動脈ステントによる動脈瘤修復手術を行うこととなりました。数年前まではまだ普及していなかったこの新しい手法を、長生きしたために享受できることは喜ばしいことですね。
動脈瘤は脳動脈、胸部大動脈、腹部大動脈にでき、血圧の上昇時などに破裂して突然死をおこします。また、大動脈の壁が張り裂ける解離性大動脈瘤を生ずる場合があります。
九段クリニックでは、これらを早期に発見して対処すべく「血管ドック」を実施しています。症状がなくても年に一度はチェックしておきたいものです。
 
九段クリニック 阿部 博幸



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