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DR. アベの健康外来_3 新聞報道に見るがんワクチンにはどんな種類がありますか。 また、効くのですか。

2012/02/12【日本商工倶楽部・連載記事】

(2010年8月1日 631号掲載)
 
今は、2人に1人ががんに罹る時代になりました。まさにがんは国民病です。このがんを撲滅するために必要なのが、がんワクチンです。
がんワクチンには予防のためのワクチンと治療用のワクチンがあります。予防用のワクチンとして、平成21年10月16日厚生労働省より承認された「サーバリックス」という子宮頸がん予防ワクチンがあります。このワクチンは子宮頸がんの主要な原因であるヒトパピローマウイルスHPV16型と18型の感染を93.3~100%予防するものですが、HPV31型、33型、45型、58型にも有効であることが確認されています。このワクチンの使用で、日本ではおよそ70%の子宮頸がんを予防できると期待されています。
サーバリックスの場合はワクチンを接種すると抗体ができますが、この抗体ががんの原因となるウイルスと戦ってウイルス感染を防ぎます。では治療用のがんワクチンにはどんなものがあるかを見てみましょう。
治療用のがんワクチンには、①ペプチドワクチンと②樹状細胞ワクチンがあります。
ペプチドワクチンは、ペプチドと呼ばれるがん抗原(がんの特徴を示す鎖状のアミノ酸)のみを皮内に注射します。すると皮内に数少なく存在する樹状細胞やランゲルハンス細胞がこのペプチドを取り込み、リンパ節へと移動しT細胞にがんの情報を伝え、がんを特異的に攻撃するという仕組みです。現在、大学病院などで有効性と安全性をテストしている段階です。この方法は簡便なため広く用いられる可能性があり、大手の製薬会社がこぞって参入しています。しかしアメリカなどからの臨床報告では、まだ満足すべき効果が得られたとは言い難い現状です。
これに対して、樹状細胞ワクチンはすでに臨床応用の段階に入っています。樹状細胞ワクチンは、抗原提示能(言い換えると、がんの目印となる抗原を細胞の表面に示す能力)が最も高い樹状細胞をあらかじめ体外で増殖させ、これに患者さま自身のがん、もしくは人工抗原などを使って患者さまのがん情報を樹状細胞に取り込ませることで、体内に戻した時に情報伝達を効率的に行える完成されたワクチンなのです。
これをがんに近いリンパ節近くに皮内注射で投与します。すると、速やかに樹状細胞はリンパ節へと移動し、リンパ節の中で待機しているT細胞にがんの顔つき、すなわち抗原情報を伝達します。するとT細胞は示された抗原をもつ特定のがん細胞のみを攻撃するキラーT細胞となって増殖し、がん細胞に向けて突進します。
この優れた抗原提示能を持ち、がん攻撃の司令塔となる免疫細胞である樹状細胞は残念ながら血液中にはほとんどありません。しかし、赤川清子博士が血中の単球から樹状細胞を作る方法を発見したことで、樹状細胞を莫大な数に培養することが可能になりました。また、いろいろながんの目印となるがん抗原を人工的に生産することが可能になったことで、自分のがん細胞がなくてもこの治療を多くの人々が受けられるようになったのです。
当院でもこの治療を行っており、臨床成績や具体例を次号にて紹介いたします。
 
九段クリニック 阿部 博幸



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