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DR. アベの健康外来_10 先生、アルツハイマーの貼り薬をください!!

2012/02/12【日本商工倶楽部・連載記事】

(2011年10月1日 638号掲載)
 
いつもは腰痛や膝の痛みで通院している、80歳になる小柄な女性が突然言い出したのです。「先生、アルツハイマーの貼り薬をください」と。
彼女は多少の物忘れはあったようですが、話を聞く限りでは特に生活に支障をきたす様子ではありません。しかし、本人は物忘れの進行を恐れて新聞記事などを注意して見ていたのでしょう。
現在のところ、認知障害を完全に治癒させることのできる薬剤はありません。今日まで使用されているアリセプトという飲み薬も、早期から飲み始めて認知症の進行を遅らせる薬です。
最近、いくつかの新薬の保険診療が認められ、現在日本で入手できるアルツハイマー病の薬は4種類となりました。アリセプトの他に、メマリーやレミニール、それに貼り薬であるリバスタッチパッチ(またはイクセロンパッチ)です。レミニールは長期服用により他の薬に比べ効果が高いという報告もあります。これらの薬は他の3つの薬のいずれかとの併用により更に効果が高まるとされていれています。
いずれにしても、上記の薬を使用することで認知障害の人のQOL(生活の質)や家族の負担を減らすことが期待されています。介護時間の短縮はもちろんのこと、施設への入所の時期を遅らせる効果もあります。
この女性に対して、私は希望通りの貼り薬のリバスタッチパッチを処方しました。4.5mg、9mg、13.5mg、18mgと病気の症状にあわせて量を増やしながら使います。貼り薬だと飲み忘れや飲み過ぎといった服薬の失敗を防ぐことができます。左右交互に貼り換えることにより皮膚のかぶれやすさも緩和できます。新薬の登場で、これまで見過ごしてきた患者さんにも適応が拡大するため、認知症の診療の裾野が広がってゆくと思います。
認知障害は神経細胞の死が進んで症状がでるようになるので、手遅れにならないうちに早め早めの対策が必要です。植木彰教授の研究によりますと、アルツハイマー病になった人とならなかった人の食生活には、明らかな差があったそうです。アルツハイマー病のグループでは肉食を好む人が多く、ならなかったグループでは魚を好んで食べていたと報告されています。
このことから魚、特に青背の魚にはEPAやDHAを多く含み、脳機能を温存したり、脳の細胞死を遅らせることになり、アルツハイマー病の発症を遅らせる効果があると考えられます。仮に、食養生により70歳で認知症を発症する人が、90歳になって発症したとすれば、本人にとっても社会にとっても好ましいことでしょう。
ちなみに、どの様な「脳トレ」が最も効果的かを調査した報告があります。脳の前方にある前頭前野は、言語や感受性をつかさどり、人間性を保つ部位だと言われています。その前頭前野を最も活性する方法を研究した調査です。カラオケ、簡単な計算、コンピューターゲームなどの数百種の行動の中で、「音読」が最も前頭前野を活性化させたそうです。アルツハイマー型認知症が改善した、という報告もありました。音読によって聴覚や口唇、咽頭などが総動員され、脳の機能がフルに生かされると考えられています。
以上の報告は、認知症になりにくい生活習慣やライフスタイルが存在することを示しています。食事や運動のみならず、五感を研ぎ澄まし、認知症を遠ざけるように心掛けましょう。
 
九段クリニック 阿部 博幸



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