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がんに関するレポート② 世界のがん5年生存率から見えたもの

2015/01/21【がん治療について】

 前回は米国の統計から見るがん事情をお伝えしましたが、日本はと言えば、厚生労働省の発表する統計によると、1981年以来、死因の第1位が悪性腫瘍となっています。死亡者全体の約3割を占めています。

 
しかし、国立がん研究センターの統計から5年生存率を見てみると、1993年~1996年にがんと診断された人の5年生存率は49.2%だったが、2003年~2005年にがんと診断された人の5年生存率は58.6%と上昇しています。
 
米国と同様、がんにより命を落とす方がたくさんいらっしゃる一方、生存率は確実に上昇しています。
 
そして更に興味深いレポートが昨年の冬Lancetに発表されました。

それは、Global surveillance of cancer survival 19952009: analysis of individual data for 25676887 patients from 279 population-based registries in 67 countries (CONCORD-2)と題されたように、

1995年から2009年の15年にわたり、67ヶ国における279拠点の地域がんに登録された2567万6887人のがん患者一人ひとりのデータを標準化し、胃、結腸、直腸、肝臓、肺、乳房(女性)、子宮頸部、卵巣、前立腺、白血病(成人と小児)のがんについて5年生存率を比較した、壮大な研究成果が報告されています。
 
指標とした10種類のがんの5年生存率の結果を、かいつまんで紹介します。
 
●2005年~2009年に胃がんと診断された人の5年生存率
他国が25-30%とふるわないなか、韓国(58%)と日本(54%)が非常に高かった。
 
●2005年~2009年に結腸がん、直腸がんと診断された人の5年生存率
多くの国で50-59%というなか、22ヶ国では60%以上という結果。日本(64.4%、60.3%)も健闘している。
 
●2005年~2009年に肝臓がんと診断された人の5年生存率
10-20%と概して低いなか、20%を超えるのは3ヶ国だけで、日本(27%)がトップ。
 
●2005年~2009年に肺がんと診断された人の5年生存率
10-20%と低いなか、20%を超えるのは2ヶ国だけで、日本(30%)がトップ。
 
●2005年~2009年に乳がんと診断された人の5年生存率
34ヶ国で80%以上(内17ヶ国で85%以上)と良好ななか、日本(84.7%)も高い生存率を示している。
 
●2005年~2009年に子宮頸がんと診断された人の5年生存率
70%以上がわずか5ヶ国で、日本(66.3%)を含む34ヶ国で60-69%。
 
●2005年~2009年に卵巣がんと診断された人の5年生存率
40%以上という国が19ヶ国。それ以外の国のほとんどが30-39%で日本(37.3%)も低い。10年前と比べて生存率が向上している(2-10%)国が多かったのが特徴的。
 
●2005年~2009年に前立腺がんと診断された人の5年生存率
40%以下という国から95%以上の国まであり、バラツキが目立った。14ヶ国で90%以上、日本(86.8%)を含む19ヶ国で80-89%、18ヶ国が50-79%。
 
●2005年~2009年に成人白血病と診断された人の5年生存率
21ヶ国で50-60%。特徴的だったのが日本を含むアジア15ヶ国が低く、その中でも日本(18.9%)、韓国(23.4%)、台湾(22.9%)はとても低い。固形がんに概して高かっただけに驚く結果であり、これは民族的、遺伝的要因が関与しているのかと記されていた。
 
●2005年~2009年に小児急性リンパ性白血病と診断された人の5年生存率
生存率のバラツキが目立った。5ヶ国で90%以上という好成績がある一方、21ヶ国で80-89%、日本(81.1%)。そして多くの国で60%以下であった。
 
日本の5年生存率は成人白血病を除いては、おしなべて高いことがわかります。レポートでは胃がんの5年生存率の高さに触れながら、これは“徹底した診断活動、早期診断、根治治療に起因する可能性が高いと考えられ、診断と治療について学ぶべき重要な教訓がある”と記されていました。
 
日本国内では昨今、健康診断の否定論を立てたり、日本の医療のレベルは低いと声を上げ、がん治療を否定することが話題を振りまいていますが、今回ご紹介した統計から浮彫にされるのは、診断から治療に至るまで日本の医療のレベルの高さと言えないでしょうか。
 
長年臨床に携わる私は早期発見でがんを克服した人を何人も診てきているので、がんの克服に早期発見は間違いなく重要なキーワードのひとつであると確信しています。がんと診断されても慌てることはありません。医療技術は確実に進歩しています。セカンドオピニオン外来なども利用し、あなたにあった治療、あなたが納得いく治療を見つけて治療に臨むことむことが、何よりも大切です。


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