HOME > ドクター阿部のBLOG > 個別化医療 > 加速する個別化医療の成果 第19回個別化医療学会にて①

ドクター阿部のブログ

加速する個別化医療の成果 第19回個別化医療学会にて①

2014/12/25【個別化医療】

去る2014年11月15日、国際個別化医療学会学術集会が盛況のうちに幕を閉じました。

 

今回のメインテーマは「個別化医療の戦略的展開」といたしました。
個別化医療が基礎研究から臨床現場まで
様々なレベルで広がりを見せている現状を反映して
多岐にわたる演題が繰り広げられました。

 

個別化医療についての関心は、相変わらず海外での方が高く、
今回は海外から2人の演者をお招きしました。
ロシアの個別化医療の第一人者であるSergey Suchkov先生に、新しい医療モデルとしてのPPPM(Predictive, Preventive and Personalized Medicine)について、

腫瘍細胞解析で著名な研究者であるギリシャのIoannis Papasotirious先生には、エピジェネティクスと癌幹細胞との関係性についてご講演をしていただきました。

 

会頭講演は、澤登雅一先生から
「個別化医療におけるエピジェネティックスの可能性」という演題でお話をいただきました。 

 

エピジェネティクスというのは、
DNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステムです。
これを応用すれば、がん細胞の発生を抑えることができる可能性があります。
遺伝子に操作を加えることなく、その下流を制御することで、効果を得ようというものです。
例えば、iRNAという物質によって遺伝子のスイッチをコントロールする、
ヒストンというたんぱく質をメチル化することで遺伝子の働きを抑え、
メッセンジャーRNAに働きかけ、たんぱく質合成を妨げて治療するアンチセンス治療など。
さまざまな方法が研究されており、
これが臨床的にどう利用できるかが、今回の学会の大きなテーマだったのです。

 

基調講演に松田和洋先生(エムバイオテック株式会社)から「マイコプラズマ感染症への新しい医療戦略」について、田原栄俊先生(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 細胞分子生物学研究室)から「テロメア、マイクロRNAによる健康長寿プログラム」について、大変勉強になる貴重なお話しをいただきました。


基調講演の後、実際に医療現場でエピジェネティクスやバイオマーカーなどを臨床研究に採り入れている緒先生方が発表されました。
●「プロテアーゼ抗体研究―神経脱髄症予防のための新規バイオメーカー」Sergey Suchkov先生(I.M.Sechenov First Moscow State Medical University)
●「孤発性パーキンソン病の遺伝素因とゲノム研究」佐竹渉先生(神戸大学大学院医学研究科神経内科 分子脳科学)
●「ゲノム情報によるうつ病個別化治療の可能性」加藤正樹先生(関西医科大学精神神経科)
●「切除不能大腸癌に対する5-FUのTDMを用いた個別化化学療法の有用性」宗岡克樹先生(新津医療センター病院腫瘍センター)
●「生活習慣病の個別化予防システムの開発」山田芳司先生(三重大学生命科学研究支援センターヒト機能ゲノミクス部門)
いずれの先生も、うつ病やパーキンソン病、生活習慣病など治療の難しい病気に
個別化医療という切り口で取り組んでおられる実情がうかがえました。


がん治療の研究をライフワークとする私としては、田原先生のお話は興味深く、
エクソソームという細胞の中にある小胞が発見され、これが隣の細胞に分泌されて作用して免疫や細胞機能を制御しているということが明らかになり、世界でも注目されているということ。
エクソソームの活用が、がんや認知症の早期発見・治療の重要な手段になっていきそうです。

 

とても栄誉なことに、今回の学術集会に日本医学会会長の高久史麿先生にもご参加いただきました。
最後に高久先生より、このような斬新な学会があったのかと、最上級のお褒めの言葉を頂きました。医学会の重鎮にこれまで地道にやってきたことが認められ、大変感激いたしました。
 



ページトップ

"
Copyright KUDAN