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画期的な「樹状細胞ワクチンの新しい製造法」とはどんなものか ~ ④ 3種類以上のオーバーラッピング・ロング・ペプチドを使った多価樹状細胞ワクチン

2014/11/11【がん治療について】

樹状細胞ワクチン製造において、どのようなペプチドを使用するかが、
ワクチンとしての真価が問われる重要な要素のひとつになります。

一般的に樹状細胞ワクチンで使用するペプチドは
WT1やMUC1などを1~2種類で、長さも短いショートペプチドと言われるものです。
もしくは手術でがん組織を保管できた場合は、
自己がんをライセートとして使用することもあります*。

[使用するペプチドの数が重要]
人工抗原のなかで、"あらゆるがん細胞に発現しているペプチド"
として注目されている、WT1というペプチドがあります。
それなら、どんながんの人でもWT1を取り込ませた樹状細胞ワクチンで治療すれば
大丈夫と考えたいところですが、がん細胞は一筋縄ではいきません。

がん細胞の多様性は最近よく知られるようになってきました。
がん細胞は何種類もの目印(ペプチド)をもっていますが、
がん細胞によってはペプチドを何種類も発現しているもの、
ペプチドのいくつかを隠してしまっているもの、
全てペプチドを隠してしまっているものなど実に様々です。

注目のWT1を使っても、がん細胞がWT1の目印を隠してしまっていたら、
がん細胞を攻撃できません。
従って樹状細胞ワクチン製造において大切なことは、
その人のがん細胞に適合するペプチドを出来るだけたくさん使用することです。
当院では3種類以上のペプチドを使用した"多価樹状細胞ワクチン"として、
がんの多様性に対応しています。


[ペプチドの長さも重要]
使用するペプチドの数に加えて、ペプチドの長さが大変重要なポイントになります。

 

一般的には9~13個のアミノ酸から成る"ショートペプチド"が使われています。
ショートペプチドの場合、
樹状細胞のMHCクラスI分子に物理的に結合するに過ぎずません。
T細胞へ抗原提示が行われるものの、活性化に必要な十分な副刺激が与えられず、
結果的に標的細胞を十分に攻撃できないことが分かってきました。
また、MHCクラスII分子に抗原提示がされないので、ヘルパーT細胞も活性化しません。


当院ではを、13個以上のアミノ酸から成るロング・ペプチドを、
オーバーラップさせたもの
を使用しています。

このペプチドの優れているところは、

 

  1. HLAに関係なく、どなたでもご自身のがん細胞に適合するペプチドが使えます。

  2. 樹状細胞が細胞内にロング・ペプチドを取り込み、
    MHCクラスI分子とMHCクラスII分子上に提示させます。
    (ショートペプチドで見られる物理的結合ではありません。)

  3. つまり、キラーT細胞のみならず、ヘルパーT細胞も活性化します。

  4. 活性化したキラーT細胞は分裂増殖していきます。
    この過程で細胞内にパーフォリンやグランザイムといった標的細胞を攻撃する物質をもつ、
    "エフェクター細胞"と呼ばれるものになっていくのです。


3種類以上のオーバーラッピング・ロング・ペプチドを使用した多価樹状細胞ワクチンは、
強力かつ、がん細胞の多様性に対応する最も優れた樹状細胞ワクチンと言えます。

* 当院でも、手術を予定している患者さまには、担当医に連絡し、切除されたがん組織の一部を保管していただくよう依頼させていただいております。自己がん組織をライセートにして使用することで、自分のがん細胞のあらゆる目印(ペプチド)を樹状細胞ワクチンに取り込ませることができるので、強力なワクチンができるのです。
手術の予定がなくても問題ありません。人工の抗原(ペプチド)は大変に品質が高く自己がん組織を使用する場合と遜色ありません。自己がん組織を確保できた場合でも、量が少ない場合など、更に人工抗原を使用することもあります。

 



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