HOME > ドクター阿部のBLOG > 私的COLUMN > The Changing Landscape of Surgery 2~医療を変えるダビンチ、再生医療

ドクター阿部のブログ

The Changing Landscape of Surgery 2~医療を変えるダビンチ、再生医療

2012/06/22【私的COLUMN】

49.ジェファーソン大学病院でダ・ヴィンチによる手術.JPG47.ジェファーソン大学病院でダ・ヴィンチによる手術.JPG




ダビンチというロボット手術があります。 これは施術者が直接メスを持たず、手術台の上の患者に対して、4本のロボットアームで手術するものです。施術者は少し離れたところで、ハイビジョンのモニター画面を見ながら、アームを操作するのです。 アメリカで軍が開発した技術で、戦場でけがをした兵士などが、医師がいない遠隔地でも手術を受けられるように開発されたものでした。これなら、東京の患者に対して、フィラデルフィアの名医が手術できるようにもなるわけです。また、患部を拡大して表示したり、医師の動作をより繊細な動きに変換して行うことができるメリットがあります。かつてのように一握りのトップスターだけが技術を持つ時代ではなくなってきたことを象徴しているように思います。
 

ひるがえって、外科医の手技、マニュアルスキルというものは、この50年間ほとんど変わっていません。私が外科医になった時と今もほとんど差がないのが実情です。私がクリーブランドクリニックで臨床フェローを勤めていた1970年代前半に心臓のバイパス手術が始まったのですが、現在に至るまで基本の方法には変化がない。今後も劇的に変化することはないと思います。

 

21.レクチャー.JPG

ただ、だからといって外科に進化がないわけではありません。外科医の技術が外科のすべてではありません。 では外科はどこに向かうのか、というと、Black先生の唱えたように、細胞エンジニアの方向が見えている。 具体的には再生医療という方向があります。 特に心不全の際の再生医療が心臓外科に直結します。
私が米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校客員教授時代にアメリカンハートジャーナル誌に発表した論文があります。心臓の筋肉はなぜ再生しないかという実験結果について述べたものです。 動いている心臓のエネルギー代謝を測って、心臓に負担がかかったときに、細胞がエネルギーを消費して枯渇して死んでしまう、というのを世界ではじめて私が証明した実験です。MRの中に心臓を入れて、動かしながらMRSというエネルギーのスペクトルを測る。そうすると一回死んだ心臓の細胞は二度と再生しないことがわかった。だから、心筋梗塞などはそのまま再生させずに対症療法をするしかありませんでした。

 

しかし、最近では、再生医療が活発に行われています。 幹細胞(stem cell)を培養すれば、心臓の筋肉も再生できるのです。 本人の骨髄から取った幹細胞を心筋梗塞になったところに埋め込んだら、新しい心臓の筋肉ができたという研究結果もありますし、本人の心臓の筋肉から心筋シートを作って心臓に貼り付ければ心臓の筋肉が再生したという日本での研究もあります。また、京都府立医大ではBFGという幹細胞増殖因子を使って、心臓の幹細胞を増やすことに成功しています。

 

実は私のクリニックでも再生医療を手掛けています。 いろいろ研究した結果、臍帯血からとった幹細胞を使います。幹細胞を点滴で投与すると、幹細胞は悪いところに留まって、その部分を再生することがわかりました。実際、アルツハイマー型認知症の人に幹細胞を投与して、症状が改善した実績があります。最初来院した時は、植物人間みたいに感情のない顔をしていたのが、1ヶ月で回復して、表情もきりっとして対話ができるほどになりました。2週間に1回再検査していますが、確実に回復しています。

 

(つづく)



ページトップ

"
Copyright KUDAN