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ドクター阿部のブログ

医療教育のいまを憂う

2011/08/24【私的COLUMN】

日本の医師の中には医学辞書の代わりに使うパソコンがなければ
患者様にうまく診断をつけることができない医師がいます。
そんなばかな、と普通の方は思われるでしょうが、パソコンを頼りにしているのは事実です。
   
多くの医師は一生に一度も出会うことのない難しい病気の知識は豊富にあります。
医師国家試験でそういう問題が出るのだから当然なのですが、
そんな豊富な知識を持っていても、医療の現場で盲腸一つ治せなかったり、
血を見るのが怖いという医師もいたりします。
そういう治療のスキルを現場で教えてもらっていないのです。
また、医師というのは聖職であって、高い倫理感を持たなければならないのですが、
これも教えられない。
医師に重要なのは、倫理、知識、技術の3つ。
知識だけは豊富にありますが、倫理感も技術も欠如しているため、
新聞ダネにされている記事もよく見られます。
こういう状況に陥ったのは、教える側にも責任があります。
教授の教育スキル不足による教育力の低下が良質な医師の育成をはばんでいると思います。
医師免許を得てからの医師教育という観点がなおざりになっているのではないでしょうか。
 
 
アメリカではこうはいきません。
私がいたころは、一つの教室に何人もの教授がいて、切磋琢磨していますし、
教授自身も常に管理者や準教授、助手、学生など上から下から評価を受けています。
契約制ですから、期間中に実績を上げなければその職を追われてしまいます。
だから彼らも必死。教育という点では、学生の教育専門の教授というのもあります。
  
また、大きな病院の専門医だけでなく、普通の病気だったら、家庭医にかかります。
いわゆるかかりつけ医ですが、彼らも経験と実績を重ねていて、
数年ごとの更新制度もありますから(州によって違います)、
診断や治療にとても真剣なのです。
かかりつけ医で手に負えない症状の場合は専門医に送るのですが、
その際、かかりつけ医の診たデータもそのまま送られる。
間違うことはできないわけで、家庭医レベルでも真剣さは変わりません。
  
日本でもかつては医局制度やインターン制度というのがあって、
新人の医師は現場でたくさんの患者様を診察して、様々な症例に突き当たり、
その都度、徒弟制度のように先輩医師や教授に教えを請うて、
知識と経験とスキルをつけていき一人前に医師になるという仕組みがあったのですが、
この制度が廃止され、
国家試験に受かったら即、一人前の医師として遇されるという状態になってしまいました。
しかしそれは医師自身にとっても不幸なことで、
現場に対応できずに悩み、場合によっては心を病んでしまう医師が出てきたりするのです。
インターン制度を復活させるとか、いろいろ方法はあると思いますが、
現場で医師を鍛え、能力を高めさせる仕組み作りを急がなければなりません。
教育制度の構造を一朝一夕に変えるのはきわめて難しいのですが、
私は、一刻も早く手を打たなければ、
医療崩壊は取り返しのつかないところまで進んでしまうのではないかと
危機感を募らせているのです。



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