HOME > ドクター阿部のBLOG > 私的COLUMN > アメリカ医療事情~1日で40人を診断する技術

ドクター阿部のブログ

アメリカ医療事情~1日で40人を診断する技術

2011/08/16【私的COLUMN】

アメリカの医療体制は日本とまったく違います。私は30代の時にアメリカの三大クリニックの一つであるクリーブランドクリニックでフェローとして働いていました。その時担当した入院患者は平均40人、多いときは60人にも達しました。これを全部一人で診なければならなかったのです。

アメリカ時代01.jpg

一口に40人といっても日本の大学病院の1つの科が入院を受け入れるのがそのくらい。それだけの患者様を一人で診ていたのですからたいへんでした。一人15分としても、40人診るとしたら10時間かかる。朝から晩まで食事をする暇もない。朝の5時から診察しましょうなんてこともありました。
ただ、そのおかげで、早く的確に正しい診断を下すスキルを身につけることができました。これが日本の医師に最も欠けている資質ではないでしょうか。

 



早く正しい診断を下す必要性は、アメリカの医療事情から来ています。
アメリカには日本のような公的医療保険制度がないからです。患者様は治療だけでなく、検査するのにも高額な負担をせねばなりません。そのため患者様側の要求水準はとても高くて厳しいのです。
日本だったら入院して検査しても、2週間後に結果出ますからまた来てください、とか、熱が下がらないという患者様に対して、レントゲン撮りましょう、それでわからなければ、痰の検査をしましょう、わからない、おなかの検査しましょう、わからない、便の検査しましょう、と一つ一つやるから時間も手間もかかる。ウイルス性のものだったら何やっても出るはずがないんです。ピントの違う検査をのんびりやっているうちに患者様の容態はどんどん悪くなってしまう。医療費は保険でもばかにならないし、無駄な時間もかかる。
アメリカではそんなことは許されない。1日で全部やっちゃう。その時点での患者様の費用負担は高いけれども、1日で熱の原因を特定し、治療して早期に治すのだから、症状を悪化させることもなく、治療コストも結果的に安くなるという考え方です。日本よりはるかに合理的です。


■早く正確な診断を下すために

 

1日で全部やっちゃうのだから、医師の診察も徹底的にやらなければならない。診断を間違えることもできないのです。
悪いところを診るのは当然ですが、それ以外にも人種、生活歴を聞き出し、髪の毛や目を見て黄疸がないか貧血がないかを診、首を診て甲状腺異常はないか、体に触って肝臓腎臓に異常はないか、腫瘤はないか、足のむくみなどあらゆる臓器に関して記載していかねばなりません。
しかも間違えたりしたらすぐ裁判になる、責任の所在は明確だから言い訳がききません最初の診断はいわば基本データとしてどこまでもついて回るのです。

だから、普通にやってたら1人1時間はかかる。先にお話しした入院患者でも基本的に同様のことをやるのですが、私はそれを凝縮した手法で10分か15分でやっていました。経験を積み、スキルを高めていったからできたことです。
日本でも早く、正確に間違いのない診断をすることは医療の基本です。患者様に長時間不安な思いをさせないために、また早く、適切な治療を行うためにも、診断する力の重要性を日本の医師も自覚してもらいたいと思います。



ページトップ

"
Copyright KUDAN